会社は誰のもの

先日、昔の知り合いから連絡があり、会社を設立したので一度挨拶に行きたいと連絡がありました。同様の電話は今までにも何度かあり、珍しいことでもないので、近況でも聞こうかと会うことにしました。聞けば、知り合いとお金を半分ずつ出して会社を設立したということらしいです。

詳しくは聞いていませんが、会社の設立でお金を半分ずつ出すということは資本金を半分ずつ出すということです。本人は代表者にはなっていないようですが、電話では「会社を作ったので挨拶に行きたい」というくらいですから、自分の会社という意識を持っているのでしょう。

会社法の議論では会社は誰のものかという論点は長年の争点になっています。コーポレートガバナンス論の根底はここにあります。会社は働く従業員のものととらえれば、従業員満足を限りなく高めることが経営者の使命と言えるでしょうし、会社は公器ととらえれば事業活動の成果を社会に還元することを主題に経営を行うということにります。

しかし、会社法上は会社は株主のものというのが常識です。だからこそ、株主としての地位をめぐる争いが絶えないわけです。最近では 大塚家具の親子喧嘩などは突き詰めれば法律上の支配権は誰にあるかという争いです。だからこそ熾烈な委任状争奪戦が繰り広げらたわけです。

当社でも多くの会社の設立をサポートしてきましたが、支配権がない会社を設立した記憶は一件たりともありませんし、そのような株主構造になる設立を依頼されれば必ず今後起こりうる不都合を説明し手続き前に修正を加えます。

理由は単純で、半分ずつ出資して設立した本人同士は自分の会社と思っていても、支配権は誰にもなく法律上はなにも決められない会社ということです。どちらが折れればいいのですが、大概は禍根が残ります。うまくいくことは経験的にもほとんどありません。


電話をしてきた用件は、仕事があれば回してほしいということでしたが、私からのアドバイスは本気で起業したいなら一人でやりなさいということです。

どうしても知り合いと二人で起業したいというのであれば、各々が別々に会社を設立し、自分の器を各自が持つべきでしょう。

このようなアドバイスも専門家に設立段階から相談をしておけば、事前に再考できた問題です。やはり起業というのは最初が肝心です。一度は専門家の意見を聞く機会を設けたほうが無難だと思います。