納税の猶予

会社を設立すれば必ずしなければならない作業が経理と申告書の作成です。

ご存知のように2017年4月より消費税率は10%に増税されます。消費税という税目は法人税などと違い、節税対策が取りにくい税金であり、更に金額も売上が二千万円から三千万円程度の典型的な小規模会社であっても納税額が百万円を超えることは珍しくありません。

そのため、納期限までに納税資金を用意できないケースがこれまでも少なからずありました。


その場合、どうするかといいますと、今までは税務署にお願いに行き、税金を分割払いにしてもらっていました。あくまでもこちらがお願いして分割をしてもらうと言うことです。もちろん、全ての支払いが終われば延滞税の請求が来ます。分割してもらっているのだから仕方ないと言うばそれまでですが、利率は14.6%とサラ金なみの高さです。


実はあまり知られていませんが、国税徴収法という法律には、納付が困難な状況にある納税者の救済措置として納税緩和措置が設けられています。

納税緩和措置には3つあり、「納税の猶予」「換価の猶予」「滞納処分の停止」といいます。

このうち納税者側から申請できるのは「納税の猶予」措置のみで、その他は税務署の職権で認められることがあるというだけで、ほとんどこれらの制度を利用して納税者が救済されることがありませんでした。だから、資金繰りに窮している企業は決算期に税務署へ分割納付のお願いのために足を運んでいるわけです。しかも、この行為自体には法律な根拠があるわけではなく、あくまでも納税者側は滞納者というレッテルのもと税務署にお願いに行くと言うタイムスリップでもしたかのような錯覚を覚える行為でした。


平成26年の税制改正でこの納税緩和措置に大きな変更がありました。

国税徴収法第152条の2 税務署長は、前条の規定によるほか、滞納者がその国税を一時に納付することによりその事業の継続又はその生活の維持を困難にするおそれがあると認められる場合において、その者が納税について誠実な意思を有すると認められるときは、その国税の納期限から六月以内にされたその者の申請に基づき、一年以内の期間を限り、その納付すべき国税につき滞納処分による財産の換価を猶予することができる。


この条文が新設されたわけですが、大きなポイントは太字の部分です。すなわち納税者側から申請することにより猶予が認められることになったということです。


この猶予が認められた場合の最も有利な点は延滞税が大幅に減額されることです。

これまで決算の度に税務署にお願いに伺っていた企業様はこの制度の活用を検討してみてはいかがでしょうか。