簡易課税の届出について

会社設立後2年間は消費税が免除されることは多くの経営者の方はご存じだと思います。

通常は3期目から消費税の課税事業者として納税義務が発生します。

消費税の計算は受け取った消費税から支払った消費税を差し引き差額分を納付することになりますが、小規模事業者は計算手続きの煩雑さから簡易課税といわれる簡便な計算方法が認められています。

よって、有利な計算方法を採用することになるのですが、そこで問題となるのが事前届出制度といわれるものです。単純に有利な計算方法を採用すればよいというのであれば、会計期間が終わって両方で計算してみて有利な方式を採用すればよいのですが、実際にはそれは出来ません。

 

消費税の課税される事業年度が開始されるまでにあらかじめ簡易課税を採用する旨の届出を行わなければなりません。すなわち、将来を予測して採用するかどうかを決めなければならないのです。

当事務所はクライアントの多くが新規開業組のため、ほぼ毎月消費税の簡易課税の採否の検討を行っています。

 

これが結構難しいのが現実です。特に設立したばかりの会社であれば、一年間で経営方針を転換したりするケースもあるため、大きく予測が外れることも出てきます。

 

なにより問題なのは、税制が経営を鈍化させていることです。今すぐに事務所を拡大する必要がある、移転する必要がある、または設備投資を行う必要がある場合でも、事前に簡易課税を採用していると納税額は大きく不利になります。しかも、一旦採用すると2年間は継続適用しなければなりません。つまり2年間は設備投資も、事務所の移転も出来ない(すると損をする)ということになります。

 

これにより設立したばかりの小規模事業者の利点である経営の迅速性を大きく阻害しているのが現状です。

 

税金を納めることはギャンブルではありません。将来を予測して得する方を選択するといった行為は本来は税計算の世界からは排除すべきです。

 

簡易課税を認めるのであれば、事前届出制などは即刻廃止すべきだと思うのですが、なかなか理解してもらえないようです。

 

なお、事前届出制度は消費税の分野だけでなく、所得税、法人税など多くのケースで見受けられます。青色申告の届出などもあらかじめ事前に届出をしておくことになっています。しかしこの事実を知らない個人事業者は少なくありません。

 

但し例外的になぜか後出しじゃんけんが認められる制度があります。医業の概算経費による所得計算(措置法26条) です。詳しくは割愛しますが、領収書など一切なくとも最大で社会保険診療報酬の72%は経費として認めてくれるという制度です。この制度は、確定申告を行う際に得な方を選択すればよいことになっています。

 

なぜに医師だけはこのような寛容な制度が認められ、一般の事業者には事前届出などという無意味な手続きを要求するのでしょうか。理由は政治力ですが、どうにかならないものかといつも思います。