外国人(海外居住者)の会社設立

 

中国人による爆買い(これもある意味日本への資本投下です)が話題になっていますが、近年、外国人による会社設立の依頼が増えてきているように思います。ただ、多くの場合は、日本に居住しており、印鑑登録もされている方がほとんどですので、日本人による会社設立手続きと全く変わらないのですが、稀に、外国に住んでいる友人が日本で会社を作りたいと言っているのですが出来ますかという依頼があります。出来るか出来ないかと言われれば出来ますが、多少手続きが複雑になりますが、設立自体は出来ます。当社でもめったに行う手続きではありませんので、備忘記録も兼ねて、少し詳しめに、手続きの流れを示しておきます。

まず前提として当該外国人(日本国外に居住している方)が発起人となり、なおかつ会社の代表者になる場合を想定しています。また、経験上、外国人の方で合同会社の設立というのは手続き的には可能ですが、今まで依頼されたことがないので、株式会社の設立を前提とします。

株式会社の設立手続きは大きく分けると定款認証手続きと登記申請手続きに分けられます。

 

定款認証手続きについて

定款の作成自体は日本人の設立の場合と異なることはございません。通常は委任状と作成した定款をセットにして押印及び割印をし、印鑑証明書と一緒に法務局に持ち込むことになりますが、外国人の場合は、日本国内で印鑑証明書が発行できません。その場合は、本国で発行される印鑑証明書を添付する必要があります。もちろん原本が必要になります。前述の定款及び委任状にも押印を頂く必要がありますので、手続きの流れは、本国にて印鑑証明の取得、定款等への押印、国内の行政書士事務所等へ郵送という流れになります。

なお、外国の印鑑証明書はそれだけでなく、翻訳文も添付することになっております。この点も、事務所ごとでの対応の可否が分かれるところだと思います。英語であれば当事務所でも翻訳は可能ですが、その他の言語であれば、翻訳会社等に外注に出すことになります。

 

登記申請手続きについて

登記申請には申請書以外に、公証人が認証を行った定款の他、様々な書類を添付する必要があります。その中で、最も厄介なのが払込証明書の作成でしょう。まず、払込証明書の作成には日本国内の銀行に口座を発起人が有している必要があります。外国人による設立の場合、本人自体はこの口座を有していない場合が多いと思います。その場合は、日本国内に居住する友人等に少額の出資をお願いすることで解決できます。但し、この場合も、届出している印鑑での割印が必要になるため、外国に居住されている方であれば、払込証明書を国内で作成、郵送、返送という流れになり、ややこしくなります。次に払込の時期ですが、これは定款認証後とされています。この点も日本人の設立手続きを同様ですが、外国人の場合は、特に気をつけなければなりません。法務局は、外国人だからと言って大目に見てはくれません。

その他にも注意点は山ほどありますが、とりあえず、ここまで出来れば会社自体は設立出来ます。

しかし、外国人が代表者になる場合は、設立後、投資経営ビザを取得する必要があります。

たまに、会社の代表者は日本に居住していなければならないと書かれたホームページなどがありますが、これは間違いです。

この投資経営ビザの取得のためには①資本金500万円以上で会社を設立する、②2人以上日本人を雇用する、ことが条件になりますので、設立時には最低でも500万円の資本を入れることになります。 

このように、外国人による会社設立はかなり大がかりなものとなってきます。多くの場合、日本に知り合いがいて、その知り合いを通して外国人が会社の設立を依頼してくるというケースが多いのですが、稀に外国から直接、問合せメールを頂くことがございます。残念ながら、当事務所では外国人の方からメールで直接依頼を受けても、簡単な流れなどはお答えしますが、依頼を受けることはございません。特に資本金の振込などは、日本の銀行法で認められた金融機関でなければならないことや、仮に、例えば、三井住友銀行の外国支店で口座を開設しても、外貨建てでの払込になるため、為替レートの問題も出てきます。外貨での入金では資本金が本当に振り込まれているのか判断できないため、別途、証明書の作成が必要になるようです。やはり、国内の居住者の協力を得ながら、ある程度意思疎通が緊密に出来る状態でなければ、業務として行うのは少し難しいかなと感じております。その場合であっても、様々な事情や条件を勘案しながら、我々がサポートできる範疇にあるのかを吟味して引き受けるかどうかを決定しております。